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中村敏和(助教授) 分子研リポート2000 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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研究系及び研究施設の現状 105

中 村 敏 和(助教授)

A -1)専門領域:物性物理学

A -2)研究課題:

a) 有機梯子系のスピンギャップと反強磁性揺らぎの競合 b)低次元電子系の低温秩序状態

c) 二次元電子系における電荷局在状態の解明 d)分子性導体における新電子相の探索

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) いわゆる2本足梯子系は,スピンギャップ系としての物理的な興味,ならびに高温超伝導体の候補物質として注目 されている。(BDTFP)2X(PhCl)0.5 (X = PF6, AsF6)は東北大高橋らによって開発された有機2本足梯子系である。これ らの塩は,いずれも低温で金属絶縁体転移を示す。我々は,この系の低温電子状態に興味を持ち,磁気共鳴測定から 低温電子状態を調べている。上記の2つの塩は,ほとんど結晶構造が同じであるにもかかわらず,低温電子状態が顕 著に異なっている。PF6塩は 175 K 近傍で磁化率が急激に減少し,スピン一重項転移を起こす。一方,A sF6塩は 250 K 近傍で磁化率の大きなjumpを伴う一次転移を示し,低温側ではC urie的に振る舞う。低温の50 K 以下で,磁化率は急 速な減少に転じ,14 K で E PR 信号が消失する。単結晶試料に対する1H-NMR スピン - 格子緩和率(T1T)–1の温度依存 性からこの系が14 K で磁気秩序をおこしていることが分かった。但し,反強磁性モーメントの大きさがきわめて小 さい。また,反強磁性共鳴から,鎖間の磁気双極子相互作用が重要であることが分かった。

b)強相関低次元電子系の低温電子状態は,物理の基本的かつ重要な問題を含有しており,今なお非常に大きな注目を 浴びている。特に,T MT C F 系では,わずかな圧力範囲に spin-Peierls 相,整合反強磁性相,不整合 S D W 相,超伝導相が 隣接していることがすでに知られており,物質(化学圧力)ならびに物理圧力による一般化相図が確立している。同 一系(同一物質)で多彩な電子相が競合している例は他に類がなく,擬一次元電子系の理解を深めるのに非常に有利 な系である。しかしながら,これまで微視的な観点からの理解は必ずしも進んでいない。我々は,最近新たにE DT -T T F 系と呼ばれる物質群が一般化相図の高圧側領域にあるT MT SF 系と類似の電子状態を取ることを見いだした。また, その一つの塩が不整合SDW 相転移を示し,さらにその相の中で逐次転移を示すことを明らかにした。現在,1H-NMR 吸収曲線の解析から反強磁性の磁気構造を調べている。さらに,同位体置換試料による13C -NMR 測定を行い,常磁性 相における電荷局在状態について言及する。

c) θ型と称される二次元電子系の電荷局在状態を,磁気的な手法(磁化率,E PR ,NMR )により調べている。二次元的な F ermi面をもち安定な金属状態をもつと期待されているにもかかわらず,低温で絶縁体転移を起こす物質群がある。 θ-(B E D T -T T F )2C sZ n(S C N)4塩の低温絶縁相で顕著な磁化率,NMR 緩和率の増大が観測され,新規な電荷秩序相が形

成されていると考えられる。現在,これらの電子相の電荷状態に関してNMR 吸収線形を調べている(この塩に関し ては,学習院大学:高橋教授との共同研究)。現在,この異常常磁性相の起源を系統的に理解するために,一連の物質 群に対し引き続き研究を行っている。

d)分子性導体における新電子相を探索するために,興味深い新規な系に対して微視的な観点から測定を行っている。 例えば,(C HT M-T T P)2T C NQは,磁化率が急激に変化する逐次相転移を示す。相転移の起源について磁気共鳴の観点

(2)

106 研究系及び研究施設の現状 から調べている。

B -1) 学術論文

T. NAKAMURA, W. MINAGAWA, R. KINAMI and T. TAKAHASHI, “Possible Charge Disproportionation and New Type Charge Localization in θ-(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4,” J. Phys. Soc. Jpn. 69, 504 (2000).

Y. MISAKI, T. KANIBUKI M. TANIGUCHI, K. TANAKA, T. KAWAMOTO, T. MORI and T. NAKAMURA, “A Novel Organic Conductor with Three-Dimensional Molecular Array: (TM-TPDS)2AsF6,” Chem. Lett. 1274 (2000). T. NAKAMURA, “Possible Successive SDW Transition in (EDT-TTF)2AuBr2,” J. Phys. Soc. Jpn. 69, 4026 (2000).

B -2) 国際会議のプロシーディングス

T. NAKAMURA, H. TSUKADA, T. TAKAHASHI, S. AONUMA and R. KATO, “Low Temperature Electronic States of β’-type Pd(dmit)2 Compounds,” Mol. Cryst. Liq. Cryst. 343, 187 (2000).

N. MATSUNAGA, K. NOMURA, T. NAKAMURA, T. TAKAHASHI, G. SAITO, S. TAKASAKI, J. YAMADA, S. NAKATSUJI and H. ANZAI, “Static Magnetic Susceptibility in (TMTTF)2Br and (TMTSF)2AsF6,” Physica B. 284-288, 1583 (2000).

B -6) 学会および社会的活動 学協会役員、委員

日本物理学会世話人 (2000-01).

B -7) 他大学での講義、客員

名古屋大学理学部化学科 , 「物性化学 I」, 2000年 10月−2001年 3月 . 神戸大学理学部物理学科,「低温物理学特論 IV 」, 2000年 11月 .

C ) 研究活動の課題と展望

本グループでは,分子性導体の電子構造(磁性,電荷)を主に微視的な手法(NMR ,E S R )により明らかにしている。着任か ら2年が経ち2台目のNMR 分光器も今年度中に立ち上がる予定である。現在,高圧下極低温下といった極端条件での測定 を計画中である。分子性導体における未解決な問題を理解するとともに,一連の分子性導体の磁気的,電気的性質を調べ,

分子性導体における新しい電子相,新機能を持った物質群を探索する。

参照

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